2009年12月13日

個展に行ってきました。

川寄匠クンの個展です。
ん?「クン」付けでいいの?
そうなんです。彼はまだ高校3年生です。
実は先日このblogでもエントリーした、坂口さんの教え子でもあります。
以前小さなギャラリーで、個展を開きました。
ハガキサイズくらいの小さな画を沢山出展していました。
その時の印象は忘れられません。
本当に若さに溢れていて、筆のタッチや色使いがのびのびとしていて恐れを知らない
ホントの意味での素晴らしい画の数々でした。あんなに素直な画を観たのは初めてでした。
世の中には沢山の絵描きさんがいらっしゃいます。
画を本業にしているかたもいらっしゃいます。
そういう方達のジレンマは「売れる」事だと思います。
どんなに優れた才能を持っていても、やはり人間。生活があります。
画だけで食べていくのは、とても困難な事だと思います。
私の大親友で絵描きがいました。とてもいい絵を描いていました。
彼は「国画」の会員でした。
国画に毎年入選し何か賞を取れば、とりあえず売れる画家になります。
ですが入選し賞を取る為には、選考委員に媚びを売らなければならない場合もあります。
選考委員が気に入るような作品を描かなければならないのです。
そうすると本来の彼の作品とは違うものになる可能性があります。
とりあえず賞を取る為の画はこんな風に描いて、後は個展で自分の描きたいものを描く!と言うことになるんですね。
彼はそんな仕組みの画の業界に辟易していました。ですが、生活の為にはそうせざるを得ないのが現状なのです。
大好きな画家の一人に、田中一村がいます。
彼は一旦は画壇にデビューしてそれなりに成功を収めたのですが、画壇への絶望感から奄美大島へ移ります。
「大島つむぎ」の染色のアルバイト(?)をして、お金が出来ると絵の具を買い、画を描き続けました。
誰の為でもありませんし、売るのが目的でもありません。描きたいから描いていたのです。
一村の作品の中でも「奄美大島」での作品は、結局彼の死後に評価されました。
画壇と画家、生活する為の画家・・・・・
本当に画で生計を営むのは、とても大変な事だと思います。

ところが生活に関係なく趣味で画を描いている絵描きさんでも、今度は違う意味で媚びる場合があります。
誰に媚びるという訳ではないのですが、ある程度上達すると、もうちょっとこうした方がいいかな?
色もこっちの方ががいいかも・・・構図はこっちだよなあ・・・などなど・・・・
まあこれは媚びるというより、テクニックになると思います。
画を知れば知るほど、テクニックを知れば知るほど色々な考えが頭を巡ると思います。
少しでもいい作品に仕上げようという自分に対しての「媚び」なんですね。
それが悪いとは思いませんが、ほんの少しでも画の中にそれが見えてしまうと私は幻滅してしまう場合が多いのです。

そんな事を全く無視して、描きたいものだけを描くのが今回の匠クンです。
若さです。媚びもなにもありません。
描きたいから描いている、手が動くから描いている、手にした絵の具の色がこれだったからその色を使う・・・・
そんな描き方が垣間見えるんです。
何かを描こうとして描くのではなく、筆を握ったらこうなった!という印象です。
彼の体の中のエネルギーが、画を描いているように思えます。
とても純粋でとても素直で・・・・本当に感動してしまいます。
いえ、本当は考えているのかも知れません。
こうした方がいいかも?とかいろいろ考えているかも知れません。
ただ、それが画に現れないんです。そこが彼の一番のいいところだと思います。
そんな彼の今回の作品。
少しオトナになりました。(笑)
落ち着いた静かな画もありました。
が、そこは匠クン。暴れ出すと本領発揮!!(笑)
「王様」シリーズは圧巻です。
やりたい放題です!(笑)
クロッキーの人物もやりたい放題!
ホントにこんなにやりたい放題の画を観られることは、滅多にありません。
こんなに素直で純粋な画を観てしまうと、「人に媚びないで出来るだけワガママに生きていきたい!」
と常々思っている私に、振り返るきっかけを与えてくれる彼の作品に感謝です!

来年高校を卒業して大学へ進み、彼もオトナになっていきます。
オトナにはオトナの生活や、守らなければならない事も出てきます。
嫌でも社会に媚びなければならない場合もあります。
そんな時でも画に対してだけは、自分にも観る人にも媚びないで描き続けて欲しいとつくづく思いました。
高校を卒業しても、坂口先生とは連絡を取られるそうです。
また彼の作品を観ることがきっと出来ると思います。
でも、その時も今と同じように暴れまくった素直な作品を観たいですね!

彼の個展は、みやこ町の「みどりの館」(0930-33-6565)。
残念ながら今日(13日)までなのですが、お時間がある方は是非!
特に「すっかり媚びてしまった、私のようなオトナの方」(笑)に是非観て頂きたいと思います。







王様シリーズの一つです。以前よりも色が複雑になりました。
その分、深みも出ました。











これは誰を描いたのでしょう?
なんとも不思議ですが、とても力強い作品です。
今回の作品の中で、私が一番好きな作品です。



追記 今回匠クン以外に、もう二人の作品もありました。
武末剛毅クンと西村銀志竜クンの二人です。彼らの作品も素晴らしかったです。
多分次は、この二人の個展が観られるのではないかと、内心楽しみです。

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